金沢駅西口近くのテナント内に位置するこどもクリニックの計画。
コロナ禍以降に小児科を開業するにあたり、病院に行った方が病気をもらうという心配がますます大きくなる中で、待合から診察、処置、ワクチン接種などをすべて個室内で完結することで、安心して通院してもらえるクリニックを目指した。
個室で完結するクリニック
従来のクリニックでは待合→中待合→診察室→処置室と患者さんが各室を行き来するのに対して、このクリニックでは先生が各個室を巡回し、患者さんは個室で待つだけで完結できる。
一度に対応できる患者さんの数と、個室で待ってもらう時間を先生とともに考え、6室の個室を用意することにした。今後6室で不足した場合にワクチン接種などに転用可能な予備室と、長時間の経過観察が必要な場合の処置スペースを確保した。
働きやすく診察をスムーズにする動線計画
6室のうち5室はブース型の半個室、1室(個室1)は完全に仕切ることができ、隔離室として機能する。患者さんが待合に滞留しないため、テナントで入口が制限される中でも感染症患者へ対応することが出来る。
また、従来では診察室奥にある準備コーナーを個室の中心に集約し、先生がここから各個室に直接アクセスする動線とすることで、看護師と先生の連携を強化し、診察をよりスムーズに行うことが出来る配置とした。
自然素材の内装
受付はテナントの大きい気積を活かしたスギ材のドームとし、建具や家具はラワンやタモ材とすることで、木に包まれたやわらかい印象のクリニックを目指した。また、受付南側の共有部に対して大開口を設けることで、共有部でやわらげられた自然光が受付まで届き、明るいクリニックになった。
これまでの常識ではあまり例のないクリニックを検討するにあたって、先生と常に情報共有しながらプロジェクトを進められたことで、日ごろの作業の動きに合わせた壁位置の調整や備品のサイズに至るまで最後まで細かな検討、調整を重ね、個室は小さいながらも無理なく治療できる快適な空間を作ることが出来た。
患者さんに安心で、スタッフにとっても働きやすい、コロナ禍以降のクリニックの解答の一つを示せたと思う。