集まって人と関わる楽しみ
鳥取県南部町における福祉を中心としたまちづくりである。
0 歳児から高齢者まで、障がいのある人もない人も、地域のだれもが「ごちゃまぜ」に集うことで相互に関わりあい、尊重しあう関係性をつくり、みんなが元気になるまちづくりを目指す。施設の構成は多岐にわたり、福祉機能として生活介護、児童発達支援、障がい者短期入所、高齢者デイサービス、小規模保育、グループホームがあり、地域交流機能として食事処、温泉、ウェルネスなどを配置している。
現在、食事処や温泉などの1期工事が完了し、ウェルネスや小規模保育などの2期工事の計画が進んでいる。また、施設全体が障がい者の就労支援事業所となる予定である。
赤瓦の屋根が重なるヒューマンスケールの建築群は既存のまちとシームレスにつながり、子供の遊び場となる広場や敷地内を通り抜ける道に対して多様な機能を開くことで自然な交流を促し、賑わいを生み出していく。さらに周辺の空き家を活用した計画も同時並行で進め、地域福祉を充実させながらまち全体の活性化を目指している。
既存樹木や道を活かし、木造瓦屋根で地域に溶け込む
敷地は旧法勝寺高校の跡地。既存のエノキ、イチョウ、ナンキンハゼといった樹木の間を縫うように各建物を計画することで、地域住民の敷地の記憶を継承している。
地域の人たちが気負うことなく、自然体で自由にこの場所に来られるよう、既存のまちなみとつながり、溶け込む場づくりを目指し、木造・分棟としている。山陰地方特有の赤瓦をのせ、まちにあわせた屋根の連なりをつくっている。
地域コミュニティの中心となる食事処と温泉
内部には高低差を活かした小さな居場所を点在させている。床面に高低差をつくることで、近くにいながら視線をずらし、濃密なごちゃまぜの空間をつくっている。
温泉は赤御影石の「桜の湯」と大山の石を積み上げた「山の湯」の2種類の内装を日替わりで楽しむことができる。
広場に開き活動を見せる
既に工事が完了している食事処や2期工事の主要な諸室は広場に面して配置し、広場に対して大きく開いている。さまざまな活動が中庭から見えることで障がい者も高齢者も地域住民も働く人も、お互いの様子が“見える”ことで理解が深まる。
周囲の空き家を活用することで賑わいをまちに広げる
町内には200 件ほど空き家があり、徒歩圏内の空き家を積極的に活用す
る。現時点で子ども第三の居場所(法勝寺温泉別館)、製粉製麺所(就労支援)、事務所として空き家を活用している。
地域にあるものを活かすことで、地域住民が慣れ親しんだ環境を継承しながらまちを活性化させていく。