長野県駒ケ根市の駅前商店街に建つ小さな保育園の計画。
町と関わり合いながら子どもたちが豊かに育っていくこと、子どもたちの遊ぶ姿が商店街に賑わいをもたらすことを目指した。
この保育園は未満時に特化した小規模保育施設で、0 ~ 2 歳児まで各6 名、計18 名の子どもたちが通う。
商店街に沿うように遊戯室、保育室を配置し、保育園の子どもたちと商店街を行き交う人々が相互に「見る、見られる」関係をつくり、交流のきっかけをつくっていく。吹抜けにネットを張り巡らせた遊戯室や屋外の広場は地域に開放され、保育園に通う子どもだけでなく地域の子どもやその家
族も商店街に呼び込み、多くの交流を生むことを意図している。
前面の木製建具を大きく開くことで商店街とつながり、中から外、商店街へと遊びが広がり、子どもたちは地域の中で育っていく。
駒ヶ根銀座商店街のまちづくりプロジェクト
駒ヶ根市と連携した銀座商店街でのまちづくりは2016年にスタートしている。
まず2018年にJOCAの本部を東京からこの商店街の中に移転させ、多くの職員が駒ヶ根の地に移住している。
2021年には健康増進施設「ゴッチャウェルネス駒ヶ根」もオープン。
この保育園もまちづくりプロジェクトの一環であり、徐々に多様な世代の人が銀座商店街に集まるようになってきている。

町と関わり合い、地域で育てる保育園
町の中でいろいろな人と関わり合いながら育っていくことで、人と人が関わることの大切さを学ぶーこれがこの保育園の目指す姿であり、小さくとも町に開かれた建築を目指した。


遊び場を地域に開く
平面計画における特徴の一つは遊戯室の配置にある。
いわゆるウナギの寝床と言われるような細長い敷地に対し、遊戯室(中の遊び場)を前面に配置している。この部分は地域に開放され、だれでも遊びに来ることができ、遊びによって保育園と地域をつなぐ接点となる。
遊戯室と連続した屋外の広場(外の遊び場)には木製遊具を配置し、この広場も常時解放されている。
内外の遊び場は回遊性を重視した。
遊戯室中央に建てられた杉丸太をよじ登ると上部のネット遊具に至り、そこから階段を半階下りると、踊り場のサッシからバルコニーに出られる。バルコニーと屋外の木製遊具がつながっており、太いロープを伝って広場に降りることができる。外から中、中から外、そして商店街へと遊びが広がっていく。



保育園と商店街をつなぐ木製建具
遊戯室には木製の大開口を設け、保育園と商店街を視覚的につないでいる。
コーナー部分を大きく開けられるようにすることで内外の一体感をつくり、子どもたちが自由に出入りすることを促している。

活動を商店街に見せる・商店街を子どもたちに見せる
「見る」という行為がきっかけとなって交流は生まれていく。
遊戯室、保育室を商店街に沿うように配置することで、ここを通る人は子どもたちの様子を見ることができる。
保育園の中の子どもたちからは商店街の様子を見ることができ、町を身近に感じられる環境をつくっている。




活性化の新しい形-商店街は地域コミュニティの拠点
商店街は単なる商業施設ではなく、地域コミュニティの拠点としての役割を担ってきたはずである。そう捉えなおせば、高いポテンシャルが残されているのではないだろうか。
空き店舗や空き地に、地域福祉のニーズに合わせた施設を挿入していくことで多様な人を呼び込み、地域交流を促していくー駒ヶ根での取り組みは商店街活性化の新しい形になりえるのではないかと考えている。


