公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)が広島県安芸太田町で「生涯活躍のまち」モデル事業として進めてきたまちづくりプロジェクト。
安芸太田町は広島市中心部から車で1時間ほどの位置にある山と川に囲まれた地域である。かつては林業で栄え、ダム建設の作業員で大いににぎわったという。近年は過疎化と高齢化が進み、JRも廃線となるなどまちは衰退した印象があり、現在は人口6,000人程度となっている。
本計画では、以前「来栖旅館」として営業していた建物を、できる限りあるものを活かすことを意識しつつ、いままでこの地域になかった温泉と食事処を備えた施設を計画した。またこの建物は障がい者就労支援施設でもあり、生活介護も設けることで、老若男女問わず、障がいのある人も無い人も、国籍も問わず、誰もが自然に集まり交流が生まれる場所になること目指している。
入口は当初北側の通りの1ヶ所であったが、旅館の中庭を整備することで敷地南側からもアプローチできるように計画した。
既存建物は昭和56年建築である。既存部分1階は改修して食事処とし、一部増築して温泉を計画した。
食事処の上部の床は大々的に撤去して吹抜けとしている。
既存建物と増築建物の隙間には、入浴後に涼んだり、テラス席として利用できる半屋外のデッキを設けた。
動揺作家の野口雨情がこの地域の詩を残しており、その中の
「月が照ります 月ヶ瀬あたり 水も砕けて 月と寝る 月と寝る」
という一節や、敷地南側に流れる大田川でかつて見られた船の風景を建物やロゴ、スタッフの衣装などに随所に取り入れている。