鳥取県南部町のまちづくりの一つとして計画した、法勝寺宿の旧街道に面した町屋の改修計画。
文房具屋や学習塾として使用していた明治後期の町屋をカレー、ナンの飲食店(就労支援施設)、バー、兼ゲストハウスとして再生した。
日中は放課後や学校に行けない時にこどもが自由に過ごすことができるとともに、夜には法勝寺温泉からの2件目の店として、こどもから大人までの第三の居場所を目指している。
これまでに何度か改修された痕跡があり、明治期の土壁から昭和の繊維壁やボードが混在している状態であったが、内外共にそれらの既存部材をできる限り活用することで、かつての生活のイメージを残し、地域の人になじみのあるまちなみを継承することを意図した一方で、照明や窓からの明かりによって夜のまちを照らす存在になった。
間取りはそのまま、土間をテーブル席に変更し、土間部分を拡張して厨房としている。厨房はタタミのカウンターに座ったときに目線が合うように、土間を掘り下げている。
当初は建物奥にあった水場などもそのまま残しつつ、スマートボールやナン釜などの新しい要素も既存の中に参加する。
また、2階の床を一部解体することで、部屋のどこにいても人がいる雰囲気が感じられる。2階廊下の既存の1本引きの木製建具は、傷んだ部材とレールを取り替えることで通りに面して前面開放できるようになり、通りとの距離が近づいて感じられるようになった。
耐震診断、補強も合わせておこなった。既存の土壁が健全だったことから、耐力として考慮しつつ部分的に新たな土壁を追加した。また、既存の鬼瓦を利用しながら軽量瓦に葺き替えることで、外観のイメージを変えずに耐震性能の向上を図っている。